介護の現場で最も心身に負担がかかる業務のひとつが「認知症ケア」です。
記憶障害・見当識障害・感情の起伏…日常的に対応する介護士は、心身ともに疲れ果ててしまうことがあります。
- 同じ質問を何度もされてイライラしてしまった
- 突然の怒りや拒否で心が折れそうになった
- 夜間の徘徊や不眠対応で眠れず疲労困憊
そんなとき、「自分だけが辛いわけじゃない」と知ること、そして「対応を工夫すれば軽くなる」と気づくことが大切です。
この記事では、認知症対応で疲れたときに役立つ考え方と工夫をまとめます。
認知症ケアで大変な場面
1. 同じことを繰り返し聞かれる
- 「今日は何日?」「ご飯はまだ?」と何度も聞かれる
- 答えても数分後にまた同じ質問
👉 対応の工夫:時計やカレンダーを見える位置に置く。ホワイトボードで予定を示す。
2. 怒りや拒否が強い
- 入浴拒否や食事拒否で介助が進まない
- 感情が爆発して大声を出される
👉 対応の工夫:正面から説得せず、気分が落ち着くタイミングを待つ。好きな話題を振る。
3. 徘徊や夜間不眠
- 施設や家の中を歩き回り、転倒リスクも高まる
- 職員は一晩中見守り、疲労が蓄積
👉 対応の工夫:環境調整(照明・足元マット)、安全な徘徊ルートを確保。
4. 家族対応
- 「もっとちゃんと見てほしい」と言われる
- 家族の理解不足から職員が板挟みに
👉 対応の工夫:ケア内容を具体的に説明。記録や写真を共有して理解を得る。
イライラしないための工夫
1. 完璧を目指さない
「すべてを自分がやらなければ」と思うと潰れてしまいます。
7割できれば十分と考え、心の余裕を持ちましょう。
2. 距離を取る勇気
強い拒否や怒りに直面したら、一度深呼吸して離れることも必要です。
「今は難しい」と割り切ることで、無用な衝突を避けられます。
3. チームで共有する
- 「昨日も同じ質問が続いた」
- 「入浴拒否が強かった」
記録を残してチームで情報共有すると、職員全体での対応が統一され、精神的負担も減ります。
4. 自分の感情に気づく
イライラは「疲れているサイン」です。
- 一旦水を飲む
- 深呼吸する
- 数分間、席を外す
小さな切り替えが介護の継続につながります。
周囲に相談する方法
1. 同僚・上司に相談
- 「こういう場面で困っている」と具体的に伝える
- 先輩介護士から実践的なアドバイスをもらえる
2. 家族と話す
- 家族が介護に理解を示せば、職員の負担は軽減
- 定期的な面談や情報共有が重要
3. 専門機関に相談
- 地域包括支援センター
- 認知症疾患医療センター
- 行政の相談窓口
第三者機関に相談することで、現場だけでは解決できない課題が整理されます。
4. 転職も選択肢
「相談しても改善されない」「人手不足で限界」という職場なら、環境を変えることが最善です。
認知症ケアを楽にする考え方
1. 「戦わない」姿勢
- 無理に説得しない
- 認知症の症状を「本人のせい」と捉えない
- 「症状」と切り離して受け止める
2. 小さな成功を喜ぶ
- 入浴できた
- 食事を一口食べた
- 少し笑顔が見られた
👉 これを「達成」と捉えると心が楽になります。
3. 自分のケアを優先する
- 十分な睡眠
- 趣味や運動でリフレッシュ
- 同僚と愚痴を共有する
介護職が倒れてしまえば、誰も支えられません。
4. 環境を変える勇気
どうしても改善できない場合、認知症ケアに理解がある職場に転職するのもひとつの道です。
まとめ
認知症対応は、介護の中でも最も大変な仕事のひとつです。
しかし、工夫や考え方を変えることで「疲れを減らし、前向きに取り組めるケア」へとつながります。
- 大変な場面を理解し、対応を工夫する
- イライラしない工夫を持つ
- 周囲や専門機関に相談する
- 環境を変える選択肢も忘れない
あなたの心が少し軽くなることが、より良いケアの第一歩です。