「ありがとう」が言われないときの気持ちの整理

今日も誰にも感謝されなかった」

そんな日が続くと、ふと心が折れそうになる――。

介護職の多くは、人の役に立ちたいという優しい気持ちでこの仕事を選んでいます。

けれど、実際の現場では「ありがとう」と言われるよりも、

怒られたり、クレームを受けたりすることのほうが多いのが現実です。

夜勤明けの疲れた体に、きつい言葉を浴びせられる。

自分では精一杯やったのに、誰も気づいてくれない。

そんな毎日の中で、「私の努力って、意味あるのかな?」と感じる瞬間があるはずです。

この記事では、介護の現場で『ありがとう』が言われないとき、どう気持ちを整理し、前に進むかを、実際の介護士の体験と心理の両面から丁寧に解説します。

麦マネ(Twitter)

介護業界で22年目、41歳。ONE PIECEを愛する。
〈 資格 〉
・主任ケアマネ
・社会福祉士
・介護福祉士

介護の仕事と資格について情報発信。

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なぜ感謝されにくいのか

介護職は「感謝される仕事」と思われがちですが、現場にいるとそうでもありません。

そこには、いくつかの理由があります。

① 「やって当然」と思われやすい

介護は生活の延長線上にある仕事です。

ご飯を食べさせる、トイレを手伝う、着替えをする――どれも“日常”の延長。

だからこそ、「ありがとう」と言われることが少ないのです。

利用者さんや家族の中には、「それが仕事でしょ?」という感覚の方もいます。

でもそれは、あなたの努力を軽視しているわけではなく、「介護が当たり前にある安心」が日常になっている証拠でもあります。

② 感情の余裕がない

認知症や身体の痛み、不安を抱える高齢者にとって、日常は常にストレスと隣り合わせ。

そのため、感謝の言葉を伝える余裕がないことも多いのです。

「ありがとう」が出てこないのは、心の余裕が削られているから。

それを“冷たさ”と受け取る必要はありません。

むしろ、その人の不安や痛みを理解してあげられるのが介護士の力なのです。

③ 感謝の形は言葉だけじゃない

「ありがとう」と口にされなくても、

あなたの介助で落ち着いた表情になった利用者さん、

穏やかに眠る姿を見せてくれた瞬間、

それこそが“無言のありがとう”です。

感謝は言葉ではなく、「態度」「空気」「安心感」として現れることが多い。

そのサインを拾える人が、本当に信頼される介護士です。

感謝がもらえない日が続くとどうなるのか

言葉で報われない日々が続くと、心は確実に疲れていきます。

  • 仕事の意味を見失う
  • 自分を責めてしまう
  • モチベーションが下がる
  • 利用者さんへの接し方が機械的になる

介護職にとって、感謝の言葉はエネルギーです。

それが途切れると、気づかないうちに「燃え尽き症候群」に近づいてしまいます。

そんなとき大切なのは、「感謝がもらえない=価値がない」と決めつけないこと。

むしろ、「言葉をもらえなくても続けられる軸」を、自分の中に持つことです。

気持ちを切り替える方法

では、どのように気持ちを切り替えていけばいいのでしょうか。

単に「気にしない」と言われても、それができたら苦労しませんよね。

ここでは、心が少しずつ軽くなる3つの視点を紹介します。

① 目的を思い出す

介護職を選んだときの気持ちを、思い返してみましょう。

「感謝されたいから」だけではなく、

「誰かの役に立ちたい」「自分にできることをしたい」という想いがあったはず。

「感謝されない自分」ではなく、

「支える自分」であることに価値を見いだす。

それだけで、心の立ち位置が変わります。

② 「無言のありがとう」を受け取る

利用者さんの表情、動作、目の動きには感情が詰まっています。

「言葉がなくても伝わっている」という信頼関係は、

長く介護を続けるほど感じられるようになります。

日報や記録の中に、“今日の良かったこと”を1つ書く。

それだけでも、気持ちは少し整理されます。

③ 感情を言語化する

モヤモヤした気持ちは、ノートに書き出すだけで整理できます。

「今日、ありがとうがなくてつらかった」

「でも○○さんが笑ってくれたのは嬉しかった」

言葉にすることで、心が客観的に見えてきます。

感情の整理は、心のメンテナンスです。

自己肯定感を保つためにできること

介護職は、誰かのために動くことが多い仕事。

だからこそ、「自分を大切にする時間」が必要です。

① 小さな成功を可視化する

「今日は事故ゼロだった」

「○○さんが自分の名前を呼んでくれた」

こうした“小さな成功”を積み重ねていくことが、自己肯定感を育てます。

ノートに「できたこと」を書き出してみてください。

自分の成長が見えると、自然と前向きになります。

② 同僚を褒める

誰かを認める言葉は、自分の心も温めます。

「今日の対応、すごく丁寧だったね」

そう伝えるだけで、相手も自分も癒やされる。

感謝の循環は、自分から生み出すこともできるのです。

③ 自分を許す

「完璧にやらなきゃ」と思うほど、失敗が怖くなります。

人間関係や利用者対応がうまくいかない日があってもいい。

「今日は頑張った」で終えていいのです。

介護はチームプレー。

あなた一人が背負う必要はありません。

「ありがとう」をもらえない職場の特徴

中には、どんなに努力しても評価されない、感謝されない職場もあります。

  • スタッフ同士のフォローがない
  • 上司が感情的で、褒める文化がない
  • 利用者の数に対して職員が少なすぎる
  • 「当たり前」「もっとやって」が口癖の環境

そうした職場では、どんなに経験を積んでも心が疲弊していくだけです。

本来の優しさや笑顔を保てなくなる前に、

「ここは違う」と判断する勇気を持ちましょう。

環境を変えるという選択肢

「感謝されない」「認められない」

――それが続くのは、あなたが悪いのではなく、職場の問題です。

介護の世界は広く、施設の雰囲気もさまざま。

人を大切にする職場に変わるだけで、驚くほど気持ちは安定します。

もし今の環境で心が限界なら、

「転職=逃げ」ではなく「再スタート」と捉えてください。

あなたを必要としてくれる職場は必ずあります。

その一歩をサポートしてくれるのが、信頼できる転職サイトです。

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まとめ:感謝されなくても、あなたの価値は変わらない

「ありがとう」と言われなくても、

あなたが支えた日々の中に、確かに誰かの笑顔がありました。

それは、言葉よりも深い“感謝”です。

介護の仕事は、結果よりも“過程”で人の心を動かす仕事。

あなたが今日も誠実に働いていること――それ自体が、尊いことです。

だからどうか、自分を責めずにいてください。

あなたの存在が、誰かの明日を支えています。

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